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胡蝶の夢

BL・JUNE関連で緩~く感想や思いの丈などを綴っています。

   
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MW/手塚治虫 感想

 『MW』、昨日買って一気に読んでしまいました。内容結末に触れています。ネタバレご容赦を。
 
  “「MW」を全世界にばらまくため、次々と罪を重ねてゆく男と、それを阻止しようとする神父。愛し合いながらも、彼らは闘わねばならない。作者には珍しいピカレスク物が大迫力で描ききられる。”小学館のあらすじより

 すごかった。語彙力のかけらもなくなるほどには。
 賀来神父と澄子さんに関してはお気の毒ですが、あの男に魅せられたからにはどうしようもありません。
 神父さまが警察に事実を話していたら?澄子さんにしたって同じです。

 かつらにしろネックレスにしろ、犯人は足のつくものを手元に置いていました。しかし目黒検事の言う通り彼は自信過剰であり、それらを実行するのに相応しい能力を備えていたのです。証拠がなければ手も足も出ません。

 ところで、モノマニア的な自信過剰人間とはどういう意味か?無知なもので調べてみました。
  “モノマニア──一つのことに異常な執着をもち,常軌を逸した行動をする人。偏執狂(へんしゆうきよう)。偏狂。”『三省堂 大辞林』より
 なるほど確かに、MWに執着する結城はモノマニアそのものです。

 彼は幼いころMWガスを浴び、島内で惨事を目の当たりにして心身を蝕まれました。
 ここだけ切り取れば、悲劇のヒーローが悪の政府に立ち向かう勇敢なお話です。が、それだけで終わらないのが巨匠……ということなんですね。

 そもそも何故急にこの作品を読もうと思ったかというと、ニュースでオリジナル版が発売されるのを知ったからです。あらすじを見て、これは読むしかないと直感しました。

 このブログの数少ない読者さまならお察しでしょうが、“SFサスペンス” “同性愛” “神父"と聞いて黙っていられるはずもなく本屋巡りの末やっとこさ手に入れたのでした。大型書店でないと意外と置いてないものです。密林さんにお世話になってないタイプの人種なので……。

 閑話休題。
 天下の手塚先生、一般向け雑誌掲載ということもありさほど濃いものは期待してなかったのですが、がっつり同性愛描写がありました。
 第1章から賀来神父と結城美知夫の交わり(を示唆するもの)があって、エッいきなり!?と驚いたものです。

 その後も勤め先支店長の娘である美保、元は賀来神父を好いていた澄子、ガス漏出事故を隠蔽した議員の娘・美香、某国中将ミンチ夫妻、飼い犬の巴とまで!澄子が思わず悪魔と称したのにも頷けますし、それ以前に賀来もメフィストフェレスと呼んでいますね。


 いろいろな貌を巧みに用いて人々を翻弄するさまは、鮮やかとさえ言えるほどでした。もはや目的のための手段なのかその逆、あるいは両方……。結城のなかにある“欲”を満たす道具でしかないのかもしれません。賀来神父すらも。

 ただ、神父さまだけは最期まで特別だったと思いたい。賀来が神父を辞めたとなれば、これまでみたく神の教えに背くなどと言わず行動に際限がなくなり、結城にとって不利に働くので全力で阻止したり、「あんたとはケンカしたくないがね やむを得ない時は 覚悟をしてもらう」とも言っています。

 また、最終話で賀来がMWを手に海へ身を投げたときには唯一涙を見せました。あれは真実の涙と受け取ってもいいのでは、と考えます。猟奇殺人を繰り返す結城の拠りどころ。ことの始まり。一蓮托生……とは言ったものの結城は兄と成り代わり生き延びていますがあのようすでは先は永くないでしょう。

 真実といえばミンチ中将を足蹴にしながら、「この俺にガスをかがせて一生をだいなしにして 尻ぬぐいをさせた奴はどこのどいつだ!!」と言っていたのは少なくとも本音が混じっていたかと思います。実際のところはわかりませんし、賀来にも復讐ではないと言っていたので五分五分くらいかと解釈しました。
  女装とか入れ替わりとか、あれだけ次々殺しをはたらいてそんなに上手くいくもんじゃあないよと思ったらそこまでなんですが、物語を通してそれをやってのける頭脳と狂気が結城にはあると感じさせるところが流石としか言えません。

 最終的に、彼に歌舞伎の女形である兄がいたことがあんなにも重要になるとは思いもしませんでした。飛行機内でもみ合った時点でアレ…?と疑問でしたがよもや。作中、兄・玉之丞の名を出して何度も悪事に利用しており、因果応報時は来たれり!……と思いきやな結末だったので溜め息ばかりもれました。
 
 何が悪で何が正義なのか?そんなものは誰にも決められない、わからない。MWによって人生を変えられた人たちのお話。

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聖なる黒夜/柴田よしき 感想

 柴田よしき先生著『聖なる黒夜』の読書感想です。
 ネタバレありで多少内容に偏りがあると思いますがご容赦くださいませ。

 刑事の麻生龍太郎と893の男妾あがりである山内練をめぐる過去の因縁とは果たして何なのか。
 ミステリーと恋愛物語両方の面から楽しめました。文庫版は上下巻で、二冊ともそれなりに厚さがあってボリュームたっぷりなんですが、とりつかれたように一気に読んでしまいました(笑)

 最後でどんでん返しです。事件の犯人もエッてなりました…そういえばあの人全然出てきてないけどどうしたんだろうって思ってた矢先のことですよ。逆に読んでて少しずつ黒幕がわかってくさまにはゾクゾクしました。
 しかも練は本当に冤罪で、ほんの一言で一人の人間の人生をああまで変えてしまうことには、何とも言いがたい気持ちになりました…
 そして肝心の恋愛ですが。麻生と練には幸せになってほしいと切に願います。二人とも生き残ってよかった…

 人間関係はドロドロですよもう。そういうの大好きです。
 韮崎は事件の第一被害者です。練をバレンタインデーに拾ったのがまさしく韮崎なんですが、この二人もずっと歪んだ関係を続けてたという。
 互いにとっての存在が大きくなりすぎて、もう二人一緒にいなかった頃には戻れないような関係になっているのがどうしようもなくてたまりません。

 及川に関しては本当に切ないです。学生時代から麻生のことが好きで、彼が結婚してから関係を終わりにしてからも想ってたとは、なんて一途なんでしょう!
 捜査では麻生が練ばかりに構う理由にも感づいてましたし…それを思うといろいろ複雑です。

 ところでこの物語には様々なタイプの性愛が出てくるのでここで整理。
 麻生・韮崎・練はバイ、及川はゲイ。田村・北村は刑務所では男を相手にしてたけどあれは余興で本来はヘテロかと思います。

 麻生と及川の関係は、
 麻生は"女"の信号を受け取る側だけど及川といるときは女役だった。
 でも後でわかるとおり"男"で己を固めてた及川は本質的には"女"だった。
 だから信号だけでいえば麻生と及川はかみ合うことになる。
 結局、二人の関係は麻生の錯覚と及川の片想いだったわけです。辛い。

 でもっていったい練は作中で何人の相手をしてるんだ!と思って相関図書いたら総受けもいいところ…加えて女性ともシてますからね。

 人間関係はちゃんと読んでないと頭がこんがらがりそうになりました。これまで読書を怠ってきた結果ですね…。
 何しろ韮崎の愛人が多いもので、誰がどの仕事をしてる人間でどのように関わりを持ったかを覚えるのでキャパがいっぱいになりそうでした(笑)

 最終的に麻生と練はちゃんと結ばれました。でも練は犯罪に手を染めてるんですぐには上手いこといかないのです。二人の物語はこれから始まるんですね。
 私の好む物語はまず全員生き残るかどうかが重要なので、生きて想い合えることは実に素晴らしいことだと思うわけです。

 二か月くらい前に読んだんですが、今になって感想を書こうと思ってもまだ内容がかなり頭に残ってました。それだけ自分の中で印象的だったんでしょう。
 こういった小説をもっと読んでみたいです。嗜好にどんぴしゃだったのでなおさら。また古本屋めぐりでもするとします。

拍手[3回]

  

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