胡蝶の夢
BL・JUNE関連で緩~く感想や思いの丈などを綴っています。
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- 2019.11.24 灰の月/木原音瀬 感想
- 2013.04.02 美しいこと/木原音瀬 感想
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HOME/木原音瀬 感想
木原音瀬先生の『HOME』感想です。ずいぶん前に新装版を買ってから本棚で眠っていたのを引っ張り出してきました。ステイホームで読書が捗ります。ではネタバレ必至の感想サクッと行きます!
何を考えているかわからない攻め×悶々と悩む受けです!木原先生鉄板?の組合せですね~!いくら受けの青木篤視点で話が進んでいくにしたって、攻めの黒田直巳の考えが読めなくて不安になります。
一難去ってまた一難で、ここがどん底かと思いきやさらなる地獄へ突き落とされるような展開に気分がドーンと沈みます。残りページこれだけしかないのにどう収まるの?!大丈夫?ちゃんとくっつく?いつかみたいにBADエンドで終わったりしないよね?と焦燥感に駆られる。
一番驚いたのは、直巳が伊沢邦彦の顔に整形してしまうこと!ええ~っ!?別の本で体を作り変えるのもあったけど、それ以前に顔も変えちゃう話もやってたんか~愛が重い!!顔をレベルダウンさせるなんて、新庄かよ…と理由は違うしそれは置いといて。伊沢は篤の昔の想い人で、この人に関しても物語の冒頭でなかなかヘビーな展開が繰り広げられます。
篤には隆という双子の弟がいて、学生のころ伊沢に家庭教師についてもらっていた。言いつけを守らない奔放な弟と真面目な兄。篤は人から好かれる弟と比べられるのが嫌でたまらなかった。そんな篤の気持ちを初めてわかってくれた伊沢に惹かれていくが、想いをを告げられないまま数年後会ったときには弟と付き合っていた。
いやそんなことある!?しかも、一卵性双生児ですよ。あのとき想いを伝えていたら…と本人も言っていますが可能性を考えられずにはいられませんよね。ここからスタートするので篤は伊沢のことを後までかなり引きずっています。というか生涯忘れられません。
で、その伊沢の甥っ子が黒田直巳なんですね。伊沢の亡くなった姉の子。当時直巳は小学4年生で篤との歳の差は15。伊沢と隆は養子縁組をしていたので、戸籍上では親戚になるけど血は繋がっていない。
そこまでややこしくないけど関係を洗っておかないと頭がこんがらがる。作中で何人も亡くなってるけど、相続とか大変そうだな。養子縁組してるしある程度資産があると権利関係で揉めそう。話の本筋には関係ないけどふとそんなことを思いました…。
親代わりの篤と引き取られた直巳が何をきっかけにそういう関係が始まるかというと。33歳になった篤が母親から見合いを薦められたことを知って、酔った勢いで直巳が篤を襲う。こわい!!今まで挨拶する以外ほとんど会話してこなかった同性の同居人から突然強姦される恐怖といったら計り知れません。
それを境に徐々に距離を詰めてくる直巳とまんざらでもなくなってくる篤。いい感じに恋人関係になっていくのかなーと思っていた矢先!直巳がバイク事故に遭い左目と左耳を失う。ええ~っ!(2回目)そんな、やっと上手くいきそうなところにまた新たな障壁が…。
二人がここまでの関係になる間も直巳の気持ちがわからず散々振り回されて、心身ともに病んでいた篤を支えてくれていたのが十年来の親友、立原でした。彼が“事故に遭った直巳はいっそ死ねばよかった”とまで言い放ったのにはビックリ。こういうとき木原先生のパワーワードっていうか、インパクトのある台詞は胸を打ちます。
いろいろ省いてるから立原が薄情に感じるかもしれませんが、小4から18になるまで義理の甥を育てて会社も辞めたりあそこまで献身した篤がこれ以上赤の他人である直巳に人生を左右されることないっていうのも十分わかります。好きって気持ちがなんとか繋ぎとめてるけど、それがなくなったら…。
まさに懸念どおり、事故後の直巳は自暴自棄になり自殺しようとします。間一髪で篤がなんとか助け出しますが、なぜ死なせてくれないんだという直巳。生きていても仕方ない、立原の言う通り事故で死んでいればもう誰にも迷惑をかけずに済むと。いやもう色々ありすぎだろう!!早く幸せになりたい!幸せにしてくれよ!恋に障害はつきものとはいえ多すぎでしょ!
奇跡的に快復を遂げたものの左目と左耳は機能を失い、外へもめっきり出なくなり心を閉ざす直巳。これまでに増して気難しさに拍車がかかり一緒に住んでいた家も出て行ってしまう。篤も心労が蓄積され、アルコールにも手を出し始め中毒になっていく。どうすんのこれ!どう収拾つけるの!もう駄目なのか…?というところで顔を変えた直巳が家に戻ってくる。もとい篤の首を絞めてくる!
アルコール依存症で昼間から飲んだくれていた篤は、突然現れた昔の想い人を死神と勘違いしまだ連れて逝かないで、直巳に伝えられていないことがあるから、と本音を吐露します。それが直巳本人とは知らずに。ここがもう怒涛の展開でドアのチェーンをぶっ壊して立原が乱入してくるわで笑うしかない。立原が篤のためを思って婚約したと直巳に言っていたのが嘘だとわかって、ようやく和解する二人。
こ、これで、終わり……!!昨日の夜から読み始めて半日で一気に読了してしまいました。くっつくまでに紆余曲折あってくっついてからも次から次へと問題が起きて…どこがサクッと感想じゃ。サクッとなんて無理だったんじゃ。
木原先生のヤバいやつシリーズが恐ろしい。攻めも受けも、相手のためならどんなことをしても厭わない思い切りと行動力と愛の重さが。あと何考えてるかわからない攻めっていうのも箱の中をはじめ安定感のあるこわさが読んでてドキドキします。
相変わらずの余韻を引く終わり方に、きょうは思いを馳せながら眠りにつこうと思います。
嫌な奴/木原音瀬 感想
諦め。ある種受け容れてるとも考えられますが、本人がそう認めない限り友情でも愛情でも何でもない。体しかくれない、と三浦は表現していますがそうだとしても大健闘ですよ…。
ここまで来ても互いに離れられないのはつまりそういうことですよね。人を好きになるって、愛って、難しい。
以下拍手お返事。2/24てん様。
灰の月/木原音瀬 感想
惣一は嘉藤を思うあまり作り物の胸まで付けます。性嗜好がノーマルで相手にされないのなら物理で自らが女になる、さらには自分の欲を満たすためなら体の構造を変えるのも厭わない。ヤク漬けになる前から結構ぶっ飛んだことしてます。
これには咎狗の淫靡EDを彷彿させられましたね…淫靡たんのようなゾクゾクする感じ久しぶり!滅多なことを言うもんじゃありませんね…でも嫌いじゃないんです…。一番好きなのは車椅子EDなんですがどれも人格保ててねえ!どちらも因果応報というか、いや淫靡アキラは完全に被害者のBAD EDですけども。これまで何人も手にかけてきてそれ相応の報いを受けているのかなとも思いました。
通常なら男の象徴をなくすって屈辱以外の何物でもないと思うんですが、なりふり構わないほど惣一は嘉藤を愛してやまなかった。
『灰の月』は『月に笑う』のスピンオフ作品だったんですね、あとがきで知りました。こちら単体でも問題なく読めます。問題ないどころか受の惣一と攻の嘉藤のキャラ立ちは然ることながら、作中いくつか起きる事件のエピソードも濃いのなんの。短編を何本も読んだ気持ちになります。
このほかにも設定もりもりで、全部に言及してたら原稿用紙何枚分になるんだ?ってくらいボリューム出そうなので今回はこの辺で。備忘録に箇条書きであらすじと印象に残ったエピソードを最後に連ねます。
・惣一はディルドでないとイケない体で彼女にはペニバンを使わせて事に及んでいた
・警護が手薄になったのを狙われ逆恨みされた敵対組織からのモブレ
・それをきっかけに性癖を自覚するとともに人間不信に陥り彼女とも別れる
・外泊を余儀なくされた際ディルドがなくて代わりに嘉藤を代用させようと命令
・すごく気持ちよかったのにそれ以降相手にされなくなる惣一、男をカネで買う
・激しい男遊びは組からの評判も悪く組長がほかの組の娘と見合いをさせる
・蓋を開けてみれば超の付くビッチのアル中女で嘉藤にも色目を使った
・ベッドインしたものの惣一は嘉藤を呼びつけ3P中に女を罵り本性を出す
・行き過ぎた惣一の言動に愛想を尽かし頭を冷やせと言わんばかりに嘉藤は大阪へ
・組長が殺された折、2年間惣一のもとを離れていた嘉藤が戻ってくる
・元の落ち着いた様子になっていたと思えば惣一には胸が付いていた
・一度だけと言って再び嘉藤は惣一を抱く。ようやく気持ちに変化が現れ始める
・幸せムード漂ってたのも束の間、義理事の最中惣一の行方が分からなくなる
・半年間探し回ったが見つからず周りから目を覚まして現実を見ろと言われる嘉藤
・またしても敵対組織に捕まりヤク漬けにされ裏モノAVに出演させられていた惣一
・やっとの思いで見つけたのに間一髪でち●こは切り落とされ、それを食うモブ
・クスリは抜いたものの後遺症は残り、惣一は常にふわふわしている状態に
・とても組を率いる状況ではないと、療養と称して嘉藤は惣一を連れて東京を出る
・北海道で漁師として働く嘉藤。猫と戯れる惣一。組とも一切の連絡を絶つ。
これはひどいですね。誉め言葉ですよ。山藍紫姫子先生好きな人には読んでほしい一冊です。893・陵辱・言葉責め・3P・モブレ・ふたなり(?)等々にピンと来たら是非。というわけで久しぶりに御本の感想でした!しかも発売日に買っておいて半年以上過ぎてから読むなんて今までにない。絶版の本を読み漁っては感想書いてたけど…。では長くなりましたが本当にこれでおしまい。
美しいこと/木原音瀬 感想
日常の憂さ晴らしに女装をするイケメンで仕事もできる松岡洋介と、いまいち冴えないが根はやさしい寛末基文のお話。
ヘタレ攻×強気受とカテゴリー化してしまえばそれまでですが、そんなんじゃ表しきれないほどの紆余曲折があります。
なんといっても葛藤ですよ、葛藤!女だと思って全力でアプローチしてた相手がまさか男だなんて……そりゃ青くもなります。
まして超がつくような奥手の寛末が、松岡のかりそめの姿である江藤葉子には積極的だったぶん本気さがうかがえます。
その二人が徐々に距離を縮めていく過程が丁寧に描かれていただけに、カミングアウト後の互いの心情が痛いほど感じられました。
煮え切らない寛末に読んでいるほうも焦れます。それで結局どうするんだ、男なら白黒はっきりさせろ!とまでは言いませんがけじめはつけてほしいものです。
あげくの果てに“どうして君がこんなに気になるのか、教えてほしい”などと松岡本人に問う始末。この期に及んで何を言い出すかこやつは!と突っ込まずにはいられません。
ずっと自分から松岡を遠ざけていたのに、別の女と付き合ってみて気付いたみたいです。松岡への本当の想いを。
気持ちを切り替え始めていた松岡にしてみれば、今さらそんなこと言われても困るのは当然です。
ずっと好きで、相手の気を引こうと努力した。それでも振り向いてもらえそうにないから諦めようとした。
決めたところで人間すっきり心を入れ替えられるわけもなく……そこへ好きだと思うと告げられた。
確証が早く欲しい。そんな曖昧な感情では充たされない。
ううっ……なんと余韻の残る終わり方でしょう。なまじどちらの気持ちもわかるだけに読んでいて複雑な気分になります。
途中を省略してるので終わりの寛末がとんでもない野郎に思われるかもしれませんが、松岡視点だとお考えください(笑)
寛末だって悩んだと思います。あれだけ好きだったのに相手が実は男で、でも心に惹かれていたのは事実で。どう決着をつければよいのか考え続けていました。
ようやっと展開がプラスに向き始めたところで切るとは、文庫版も憎いことをしてくれます。
実はこの『美しいこと」にはまだ続きがあって、新書のほうでは松岡と寛末の物語の行く末が読めるそうですよ。
別に宣伝ではありません(笑)なぜ伝聞調なのかと言えば、自分も読んだことがないからです……!
以前からこの作品には興味があって、ホーリーノベルズ版を買おうか悩んでいたところに文庫版の発売を耳にしてこちらの購入に至りました。
講談社文庫ですし、あくまで一般向けというところでまとめたんでしょうか。それにしても続きが気になるので、新書版買ってしまいそうです。
読んでいて一番印象に残ったのが、
“オカマでもゲイでもない君が、僕のことだけ特別に好きになった。そんな都合のいい話が本当にあるんだろうか”
という寛末の質問とも独り言ともとれないこの台詞です。この世のBLのほとんどに投げかけられたと言ってもいい大きなテーマですよ。
解説の宮木さんも述べられてますが、男同士の壁にそれほど疑問も葛藤もないことが多いんですよね。
それを描いてしまえば夢がないし、現実味を帯びてエンターテイメント性を失ってしまうせいもあると思うのです。
でもあえて真正面からそれらを表現することで、物語の深みをより増すことになるのでしょう。
小説の感想のはずがBL談義になってしまいました。あらすじも含めた長い感想は改めて別の記事にするとします。それでは。
以下拍手お返事。反転してます。
ザ・貴腐人さん
そうですね、ストーリー面で既に痛いので物理的ともなると二重に苦しいですもんね。
私はまだ木原さんの作品を他にあまり読んだことがないのですが、箱の中がいいきっかけになったのでこれから楽しみたいと思っています。